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アイアン手すりのディテール(細部)へのこだわり①

鉄を使った手すりには様々な種類があります。「アイアン手すり・スチール手摺・フラットバー手摺」など、いろんな名前で読んだり検索されていますね!

アイアンとは鉄のことですが、スチールは厳密にいうと【鋼-はがね-】のことを意味し、鉄に炭素を合成して強度と耐熱性を高めたものです。(ですから一般的な鉄製手すりは厳密に言えば≠スチールとなります)

また鉄の中でもいくつかの種類があり、大きく分けると黒皮材ミガキ材の2種類にわけられます。

簡単に説明すると
黒皮材(酸化被膜):一般的に皆さんが知っている鉄で、ホームセンター等でも売られています。酸化被膜いわゆる黒皮をまとった材の事です。
ミガキ材:黒皮材より固く歪みが少ない材になります。ミガキは黒皮材に比べ価格は高いのですが、細かな歪みがないため美しく仕上がります。(はな工房では主にミガキを使っています)

なぜ初めにこのようなこと話をするかというと、先日はな工房の製品を見たい!と言う業者さんがこられお話しを聞いたからです。業者さんがおっしゃるには「以前別のアイアン業者さんで製品を見せていただいたとき、製品がまっすぐでなく途中が歪んだり曲がっているように感じました。溶接部も全てしていなくて心配だった」と話しておられました。

このことを踏まえて今回の『こだわり①』では、美しいアイアン手摺を制作するための材料溶接留め具取付の4つをご説明していきます。

1、材料(ミガキ材と黒皮材の使い分け)

アイアン手すりに使用する磨き材
ミガキ材
黒皮材
黒皮材

先ほども少しご説明致しましたが、はな工房で主に使用するのは【ミガキ材】です。なぜ材料費の高いミガキ材を使用するかは、ミガキ材には細かな歪みや曲がり、腰の折れ(鉄職人用語)や寸法がアバウトがほどんどありません!逆に黒皮材にはこの歪みなどの要素全てがあります。過去わたしも黒皮材を使用していましたが、使う前に歪みとりをしなければなりません。インテリアを制作する鉄職人さんでは当たり前の事ですが、これが結構時間がかかります。また黒皮材はサイズが微妙に異なる(例えば規格の38㎜幅が37.6㎜など)ため、同じ規格の材をつなぐときに微妙な段差ができる場合があります。

これらの理由から、まっすぐ見せたい製品を作る場合にミガキ材が必須だと考えています。

まっすぐ2階へ伸びたアイアン手摺
壁用フラットバー手すりが一直線に!

細かな歪みがなければ、笠木(持ち手部分)がまっすぐ見えます!

ただ黒皮材を使用しない訳ではありません、黒皮材はミガキ材に比べて柔らかく加工しやすい材になるので、装飾部にはこちらを使用します。(逆にミガキ材は硬いため、装飾作りにはむいていません!)

唐草とステンドグラスの手すり
可愛い七色ステンドグラスに小さな唐草手すり

このようにミガキ材と黒皮材を上手く使用する事が、美しい装飾手すりを作るためには必要な事だと思います。

2、溶接

アイアン手すりの溶接部
1
アイアン手すりの溶接部2

溶接は主に半自動・アーク溶接・TGM溶接があります。それぞれに特徴があり、用途も様々です。どの溶接方法でも鉄職人の腕があれば美しい接合部がうまれます。はな工房では主に半自動を使用しています。

鉄は溶接するとその部分が熱せられ、冷めると縮まります。縮まる事でその部分に歪みがうまれます。

光が反射して美しいアイアン手摺

簡単に説明すると、一番上の笠木(持ち手)に縦の柱を溶接すると柱側の溶接で笠木と柱の接合部が下向きに縮まります。写真で説明すると柱間の笠木が下向の弓形になります。先ほど歪み取りのお話しをしましたが、ここでも同様に歪みとりをします。柱接合部の笠木の上をガスで炙ります。

そうすることで今度は反対側に縮みまっすぐな笠木になるのです。鉄職人はこれを繰り返しより美しくなるように仕上げていくのです。

アイアン手すりの接合部3
アイアン手すりの接合部4

はな工房のアイアン手すりはほぼフル溶接を基本としていますが、初めにお話しした業者さんの「溶接が心配」のお話し。

溶接のテクニックにはフル溶接以外にもタップ溶接や線溶接など複数の手法があり、制作物によってその手法を変えて溶接します。例えば片側ばかりに溶接箇所が多い場合に、全てフル溶接していると歪みが大きくなりすぎてなかなか直せなくなります。その場合溶接の強度に問題なければタップ溶接や片側だけの溶接にしたりします。(ただやはり手すりですから、フル溶接していないと心配!と感じられる方は多いかもしれません。)

見た目の美しさも重要な所ですので、やはりフル溶接したいものです。

3、留め具

さて、選ぶ材料や歪みとり、溶接で美しさが変わるお話しの次は具体的な細部のお話し。

アイアン手すり留め具1
W60×H50×T=4.5
アイアン手摺留め具2
50×50×T=4.5
アイアン手すり留め具3
38×38×T=4.5

基本的に留め具は出来るだけ手すり自体を邪魔せず、ちょうどいい大きさを考えています。上記の写真は、普段使用している規格化されたサイズの留め具です。おそらく一般的なアイアン手摺よりも小さく薄いものになっていると思います。

制作する上で心掛けている事は、空間においてのアイアンの比率です。もし一級建築士さんが建てられるような、計画段階からその事を想定し留め具が隠れるように進められるのであればより綺麗に見せられるかもしれません。ただ一般住宅においてはそうもいきません!工期も短いですし、お客様が最後の最後に手すりを選ばれるかもしれません。そのため後付けが基本ですから、留め具もアイアン手摺りの一部と考え魅せる留め具を心がけると、自然と小さめになってきました。

特に黒色で塗られるアイアン手すりが多いので、白いクロスの場合には留め具もしっかりと主張してきます!少しの事ですが、黒の面積が増えるとそれだけ白の面積が狭くなります。それが手摺自体ならまだ良いのですが、留め具の場合にはそうはいきません。

もちろん小さいだけが良いことではありませんし、小さすぎて強度が弱くなっても困ります。出来るだけバランスを追求した結果が【少し小さめの留め具】となりました。

隙間はライナー(1.2・1.6・2.3㎜)調整
① ライナー調整
リフォームでよく見られる低い斜め壁へ取付
② 斜めへ取付
設置場所で考える取付方法
③ 向きを変えて取付

その他留め具に関係してくる写真が3枚!

①:主に吹き抜け手摺の両側が壁の時、隙間に薄いライナーをいれ調整して取り付けます。調整金具を使用すれば楽なのですが、出来るだけキレイに見せるためにこの方法をとっています。工期的にクロス前に採寸してクロス後に取付る事が基本となるため、コーナー下地やパテの具合で寸法が変わる事を予想し、少し小さめに製品を作りできた隙間にライナーを入れています。壁の状態によっても様々ですが、ボードの状態より2〜5㎜程度壁が狭くなります。

②:リフォーム現場に多い斜めの笠木上に取り付ける留め具。角度さえしっかりと採寸すれば特に難しい事はありません。

③:平面図や展開図をしっかり見ていても、現場に行くとイレギュラーはあります。この留め具は通常の取り付け方とは90度向きが違います。手すりは天井にも固定するタイプでしたが、天井と踏み板の被りが狭いためこのようにして工夫し取付ました。

事前にお打ち合わせできれば良いのですが、なかなかそうも行かない場合でも美しさ強度を考えて留め具を作っています。

4、取り付け方法

ビスのセンターに印を!
アイアン手すり取り付けの際は下穴を!

基本的に下穴は必ずあけます!よく無垢材にビスをうつ時に下穴をあけないと割れる!と聞いたことはありませんか?確かに無垢材の場合は割れる心配があるため下穴をあけることは必須です!!ただ、無垢材でなくてもキレイに美しく取り付けるには下穴は必ずあけて下さい。理由はまっすぐビスが下穴に沿って入って行くからです。

いくらキレイに取り付けても、ビスが斜めに入っている所は目立ちます。せっかくキレイなのに一手間を怠ると残念な部分が出てしまいます。深くあける必要はありませんがガイドラインだとお考えください。

手動ドライバーで取付1
手動ドライバーで取付2

これは我々のこだわりですが、必ず手動で取付ています!まず留め具が少し小さめと言う事と、フシに当たるとビスが折れることがあるからです。熟練された大工さんであればインパクトドライバーでも大丈夫かもしれませんが、我々は大工ではありませんし、実際折れている現場を何度か見ました!手動でしめればフシに当たった時には感触が変わります。時間は少し掛かりますが、せっかくキレイに作ったアイアン手摺ですから、1本1本丁寧な取り付けにこだわりを持っています!

まとめ

いかがでしたでしょうか?材料・溶接・留め具・取付だけでも様々な思いがあって作っている事がお分かり頂けたと思います。様々なアイアン手すりの画像を見ていて「なんだか違和感があるな?」と感じる所は、細かなディテール(細部)かもしれませんね!画像でもその美的感覚は重要だと思います。せっかく高額な価格でご購入されるものですから、自分に合う美しいアイアン手すりをお選び下さい。

追記〜「次回は遠方へ発送する場合や搬入経路が取れない場合の美しい分割方法についてお話しさせていただきます!」

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