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アイアン手すりの強度と下地の重要性|揺れを防ぐためのポイントとは

近年、新築住宅へのステンレス・アルミ・アイアン(スチール)手すりの設置も一般的になってきましたね!
はな工房ではアイアン製の手すりを制作しています。そのなかで、何度もお客様と強度についてお話しをする機会がありました。

たとえば、ある工務店の現場監督さんからは
「普段はメーカーのアルミ手すりを取り付けることがあるけど、お引き渡し後にお客様から『こんなに揺れるものなの?』とよく言われる」
また別の工務店のプランナーさんからは
「お客様が『本当にこんな華奢な作りでビス留め、大丈夫なの?』と心配される」
さらに、個人のお客様からは
「使っていてネジがゆるんできませんか?」など。
強度や横揺れに関するご質問を多くいただきます。

今回はそんな疑問を解消するべく、下地についてまとめていきたいと思います。それではどうぞ〜!

手すり本体の強度

さて、まずは肝心のアイアン製品本体の強度についてです。これは専門の方へ強度計算を依頼し、数値化していただいたことがあります。

これまでの経験上、振れが最も起こりやすい手すりの形は、上図のような「片側と足元を固定した吹き抜け手すり」でしたので、この強度計算を依頼しました。(両側の壁に固定される場合は、長さによって中央で多少の揺れは出ますが、片側固定と比べるとかなり少なくなります)

当工房で使用している材料や留め具のサイズ、ビスの種類や長さに基づいた計算となるため、あくまではな工房仕様での参考値にはなりますが、結果は以下の通りです。

等分布荷重に対する強度(当工房仕様)
※いずれも、日本金属工事業協同組合自主基準(2007)「ws=0.735 [N/mm]」との比較。

⚫︎垂直方向
 FB9×38材:
 許容荷重 wa = 1.3 [N/mm] > 基準 ws = 0.735 [N/mm] → 強度問題なし

⚫︎水平方向
 FB9×38材:
 許容荷重 wb = 5.2 [N/mm] > 基準 ws = 0.735 [N/mm] → 強度問題なし

⚫︎笠木にかかる反力
 柱(FB12×38)で無理のない反力を生じさせる荷重:
 wc = 1.1 [N/mm] > ws = 0.735 [N/mm] → 強度問題なし

⚫︎M4×50ビスにかかる反力
 wd = 2.2 [N/mm] > ws = 0.735 [N/mm] → 強度問題なし

以上のように、すべての数値が基準値を上回っており、強度上の問題はありません。
※ただし、これらの数値は下地にM4×50ビスが十分に効いている前提での計算です。

ただ私たちは、基準を満たしていることだけが、横揺れや安全性に関係しているわけではないと考えています。そのため、経験則から横揺れが大きいと予想される場合は補強をご提案したり、設置が難しいとお伝えすることもあります。

そんな中での一番の要は、なんといっても下地です。豆腐にかすがい、ぬかに釘。いくら本体の計算や補強をしても、下地が十分でなければ安全性は確保できないんです。

下地の重要性

過去にニュースで「壁用手すりが壁ごと外れた!」という話がありましたがご存じでしょうか。これは下地が入っていない壁面に、ボードアンカーで手すりを取り付けていたことが原因です。
ほかにも、実際に設置したものが大きく揺れるといった事例も多くあります。先ほどの工務店さんのケースもそうでしたね。これはひとえに「下地」の問題です。

ではどんな下地が適切なのか、設置場所別にみていきましょう。

吹き抜け用手すりの下地

当工房では水平の転落防止手すりのことを”吹き抜け用手すり”と呼んでいます。(フェンスと呼ぶことも)

壁面への固定部分は柱がいることが多いので、柱へ固定できるなら安心です。(柱がいない場合は下地が必要) 

注意が必要なのは足元で、上から「フローリング→構造用合板→(根太)→梁 」と層になっているところに、(構造上の)隙間が生じていることがあります。これは欠陥などではなく構造上そういうものなので通常は問題ありません。しかし、アイアン製品は重量物ですので、中空部分を木材で埋めていただいて50~70mmのビスが十分に効くようにするのが理想です。

*詳しくは【吹き抜け手すりに必要な下地や補強アイアンについて】をご覧ください。

↑長さや形状別に必要な補強についてもまとめています。

階段用手すりの下地

階段の踏み板は36mmくらいの厚みが一番多く、50mmのビスは突き抜けてしまいます。せめて12.5㎜程度のコンパネ下地があると50㎜のビスが十分効くきます。踏み板で多く使われているMDF複合合板(加工した木材のチップか混じった合板)単体よりも強度は上がるのでおすすめです。

形状別のポイント

・ひな段階段→踏み板にビスが効いていても、踏み板の材質によっては振れが大きくなることも。理想は下の写真でいう赤い丸の部分に下地がある状態です。

・傾斜階段(斜め笠木)→斜めの笠木の下に木で枠組みされている場合が多く安心ではありますが、厚みには注意が必要です。

・オープン階段(スケルトン・シースルー階段)→踏み板の下が見えている形状なので、下地を入れることができません。【フレ止め加工】などの補強をご提案しています。

階段はご覧のとおり下地が入れにくいところなんですよね、、物理的に下地が入れられない場合もあるでしょう。実際、現場で大工さんや現場監督さんとお話しをしていても様々な声を頂きます。でも”ネジがゆるんでこないか?”と心配される業者さんは下地を入れておられる印象があります。

オープン階段についてはまた別記事にもまとめていますので、よければご覧ください!

↑階段の種類や設置場所に応じた補強方法をまとめています。

壁用手すり・玄関用手すりの下地

文字通り壁面(階段・玄関)に取り付ける壁用手すり。階段の上り下りや玄関での支えとして使用頻度が高いので、下地はとても重要です。

石膏ボード(12.5㎜や15㎜など)が貼られている下に25mm以上の下地があれば安心なのですが、、

断熱材の関係であまり厚みのある下地を入れられないと言われたこともあります。確かに下地の分、断熱材の量が減って断熱効果が下がるのではということも理解できますので、最低でも12.5mmは確保していただくか、下地に不安があるときには柱を狙って留め具位置を調整したりすることもあります。

(石膏ボードをMクロスやベニアにして厚みを確保するという考え方もあるかもしれませんが、これはクロス屋さんも関係する事ですので、、私たちだけでどうにかなる問題でもないので難しいところです)

以上の理由から下地は12.5㎜が入っているところが多い印象です。今まで施工したお家で長年使用して「外れた」「グラついてきた」というお声はありませんので大丈夫だとは思いますが、私たちとしてはアイアンはやっぱり重量物なので、25㎜以上をオススメしたいものです!

また壁付け手すりの下地は、手すりの美しさにとても関係してきます。
すでにお家を建てられた方で、階段に取り付いている既製品の手すりがどうもガチャついて気になる!という方はおられないでしょうか。

それは下地を入れずとも柱などに取り付けできるよう、柱や間柱位置に留め具があるからです。特に回り階段やかね折れ階段のL字コーナー付近に取り付ける留め具は思いのほか存在感があり「どうしても気になるので変えたくて、、」というお声をいただくこともあります。

必要以上に留め具がないことは美しい要素の一つですよね。
下地をしっかり入れていれば、既製品の手すりでもバランスよく美しく取り付けられるんです!すでに一部のハウスメーカーさんでは、そのようにされることも多くなってきています。

ちなみに玄関用手すりは柱位置に取り付けるなら特に問題はありません。それ以外の場所へ取り付ける際には、25㎜以上の下地が必要です!

まとめると

要は、
・吹き抜け用:床の下は隙間があれば埋める・壁は柱がなければ25㎜程度の下地
・階段用:ひな壇は踏み板の下に12.5㎜の下地・オープン階段は補強を相談
・壁用:理想は25㎜以上、実際の多くは12.5㎜の下地(はな工房では25㎜をオススメ)
・玄関用:基本は柱を狙って取り付け・柱がない場合は25㎜以上の下地

この内容を押さえておいていただければひとまずは安心です。

実際のご依頼の際にはお見積り段階から下地や補強についてもあわせてご案内しています。

どうぞお気軽にご相談いただければと思います。それではまた次回。

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