はな工房がアイアン手摺をし始めた20年程前(2004年)、当初は近場で小さい手すりの発注がほとんどでした。理由としては、まだアイアン手すりが珍しかった事や高額だった事からそれ程多く広まっていなかったからと思われます。何年か過ぎたある日リビング吹き抜け+2F階段吹き抜けをぐるっとアイアンでしたいと言うお話を頂きました。
これがおそらく最初に分割加工をした手すりです!
真上から見るとJ型とでも言いましょうか?とにかく一体型では搬入すら難しい手すりを、どのようにすれば美しく分割しキレイに見せられるか?たくさん考えたものです。(T字の部分でボルト固定していますが、ボルトがポコっと見えないよう、皿ボルトを使用して固定しました。)
この手すり以降、遠方からや大きなものまでご注文頂くようになったんです。
今回のこだわり②では、いかに美しく分割しアイアン手すりを遠方へ発送したり搬入経路の難しいお家へ搬入する【美しい分割加工】のお話しです。
途中の分割加工
まず初めの分割は、階段用の手すりや吹き抜け用の手すりを途中で分割する加工です。
はな工房が一番こだわっている部分は、発送や経路が確保出来れば本来分割しなくていい場所をいかに分割していないように見せられるか!ここにこだわりを持っています。例えばW2600×H1100の2階吹き抜け用手すりで十分搬入経路がとれるのに、発送サイズを超えている為に分割しないといけない場合。ボルトが露骨に見えていたり、上だけで繋いでいる為繋がりがなくなったり。。近くのご注文ならば一体型で作れるのに!本当にもったいないと思ってしまいます。
はな工房では縦の柱に12㎜のフラットバーを使用して、分割部分を6㎜・6㎜【合わせて12㎜】になるようにしています。
一枚目の6㎜にはネジ切りをして、2枚目は皿のボルトが埋まるように穴をあけて座掘りします。
これが分割の仕組みです!(簡単に見えて?実は緻密な作業が沢山詰まっています。)
実際のところ、とても難しい加工で最後の最後まで歪みを直す作業が必要になります。ですがこれをする事によって美しい分割加工で設置した時キレイに魅せる事が出来るんです!
階段用〜吹き抜け用のジョイント加工
先ほどの分割加工同様に、いかにシンプルに加工出来るか!そこに一番のこだわりを持っています。
ジョイント加工の仕組みは、38㎜角の厚みが9㎜を2枚重ねてボルトで固定します。今回は皿ボルトではなく鍋(トラス)ボルトを使用するところがポイントです。
皿ボルトを使用すると、皿が座掘りした中に埋まってしまうので少しも調整する事ができません。それだけきっちりしっくりしているからです。一方鍋ボルトは座掘りしない為、穴の中であれば多少ガタがあり若干の調整が可能です。このようにする理由は、1ミリ以下の調整をする為です!どれだけきっちり採寸して制作しても設置場所の問題で多少傾いていたり、一直線上に階段の踏み板が設置されていない場合があります。長い手すりを取り付けるとこには1段目部分と14段目(2階に上がりきった所)部分では同じ場所に設置したつもりが、実は数ミリズレているなんて事が多々あります。例えばジョイント部分を0.3ミリ(感覚ですが)ほどズラして・・とすれば、1段目ではかなりズラして設置する事が出来ます。調整金具ではないですが、より美しく見せる方法としてジョイント部分はこの加工を採用しています。
時にはこのようなジョイント(分割方法)方法もあります。階段を登って2階に上がり切り、折り返して吹き抜け手すりがはじまる場合です。
この場合は手摺同士が同じ方向をむいているので、繋がりをより保たせる為にこのような方法で繋ぎます。
ただ一番難しいことは、きっちりと足元の高さをはかりきっちりとその高さに合わせて制作できるか。ここが一番難しいところになります。シンプルで美しい手摺を制作する上では、どの作業も気を抜くことができません。
印籠加工
これはどこでもされている印籠(いんろう)加工。文字通り『2つの材を凸凹状にして接合すること。2つの材の合わせ目が透かないように、一方を他方に突き合わせる方法』
この加工のポイントは、外側のパイプの内側の大きさと・中に入れる丸材の大きさがちょうど良い具合で入るか?になります。ガタガタ過ぎても繋いだ時に段差が出ますし、きっちりすぎると入らなくなったりします。
一例ですが、【SGP21.7φのパイプ手すりの内径が16.1φ・それに対して黒皮の16φの鉄筋(厳密に言うと16φより少し小さいです。)】【STK34φのパイプ手すりの内径が27.5φ・それに対してSGP27.2φのパイプ】などを使用します。本来印籠式は旋盤屋さんできっちりフィットするように加工してもらうのですが、いかに見えないところでコストを抑え見えるところで美しく魅せられるか!に焦点を置いて加工しています。
はな工房の分割方法は大きく分けてこの3タイプになります。他にも様々な分割方法があると思いますが、基本的はな工房では【いかに繋いでいないように見せるか】を日々考えて制作しています。せっかく高い金額を支払ったのに、ボルトが露骨に見えていたり・無理やりつなげていたり・分割せずに分かれていたりすると、「本来この部分は繋がっているはずなのに、発送や搬入路の問題でそう出来なかったのかな?」と言う部分になってしまいます。
発送したものと取付に伺ったのも
発送したもの
取付に伺ったもの
このように遠方や近場関係なく、はな工房が伺えなくても同じアイアン手すりが届けられる事を常に考えています。
発送事情と取付時期
最後に少しだけ発送サイズと取付時期について。
【発送サイズ】皆さんは発送と聞いてどれくらいまでのサイズが発送出来るかご存じでしょうか?通常の運送便は3辺合計が260㎝迄、長い物干しのようなものはある程度の長さまで運んでくれますが、厚みを9㎝×9㎝以内にしなければなりません。具体的にお話しすると、階段手すりは5段程度迄・吹き抜け用手すりになるとW1300×H1100程度が発送出来る限界のサイズと言う事になります。
その為はな工房では、重量物・長尺を専門で運ぶ特殊な運送業者さんで発送してもらいます。最大で2m×6mまで運ぶ事が出来ますが、一般的な運送便と異なり発送出来ない場所や4トン制限がある道路を通行しないといけない場合は配送する事が出来ません。(時間しても出来ません。)
もちろんいくらお金をかけても良い場合はチャーター便で発送する事も可能ですが、手摺以上の費用がかかる場合もあります。
【取付時期】厳密に言うと取付時期ではなく、お家を建てる工程のお話しです。『大きいものでも骨組みの状態で手摺を入れておけばいいのでは?』『そうすれば大きいものもクレーン車か何かで搬入して一体型で作れますよね!』とおっしゃる方がおられます。では、やれるものならやってみて下さい。抜かりなく計画して工期も長くとり、費用をいくらでもかけられるのであれば可能でしょう!
アイアン手すりの事だけでお話しすると、先に入れておくなら採寸できない為アイアンのサイズに合わせて室内を作る。現場で溶接するなら塗装も出来ませんし、後で塗装屋さんに塗装してもらう。第一に邪魔。。。
すみません。少し口が悪くなってしまいました。笑
なぜ最後にこのお話しをさせて頂いたかと言うのは、一般住宅の場合、それだけ沢山の縛りの中で考え制作している事をご理解頂く為です!大きいものでも出来るだけ美しく仕上げ、毎日の生活を豊かにしてくれるアイアン手すりを可能な限りご提供したいのです。
まとめ
如何でしたでしょうか?様々な観点からの施工を常に考えていると言う事をお分かり頂けたでしょうか?細かい分割の細部だけでなく、発送サイズや搬入経路、後期の短さ等々考慮しながらそれぞれのお客様に合った手すりがご提供出来るよう常に考えています。(その他にも様々なことを考えたオプション加工があります!)
追記〜「この写真は2F〜ロフトへ上がる階段手摺ですが、分割はしていません!わざわざ分割しなくても良いものは分割は致しませんのでご安心を!次回ディテール③で最後になると思いますが、その他の細部をご紹介いたします。」