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階段アイアン手すりを注文する前に知っておきたい、採寸の基本と注意点
階段アイアン手すりを注文する前に知っておきたい、採寸の基本と注意点

階段手すりのお問い合わせの中で”費用”と”納期”に次いで多いのが、”採寸”についてのご質問です。

「自分でも寸法を測ることはできますか?」
「図面上の寸法で依頼できますか?」

ひと言でお答えするなら、「できますができません」。
何を言ってるんだと思いますよね。でも実際そうなんです。

・少しでもコストを下げたい
・遠距離だけど、はな工房の手すりを検討したい
・プレカットの階段であれば採寸不要なのでは?

そう思っておられる皆さまへ、
何ができますで何ができませんなのか、どうして採寸が大切なのか、採寸を怠ると何が起きるのか、具体的な採寸の方法と過去の事例についてをまとめてみたいと思います!

*お家の中のアイアン手すりは大きく分けて【階段】【吹き抜け】【階段の壁】【玄関】の4カ所ありますが、このページでは【階段】に絞ってご説明いたします。

それではどうぞ!

どうして採寸が必要なのか

まずは、図面上の寸法で依頼できますか?プレカットなので大丈夫ですよね?についてです。
(以下はあくまでも私たちの考えなので、他のメーカーさんや工房さんは違うとらえ方かもしれません。その点ご承知おきください)

プレカットとは、『決められた規格・寸法で階段部材を加工する方法』のことで、いわば既製品です。昔のように現場で大工さんがカットや加工をするわけではなく、あらかじめカットされたものを現場で組み立てるもののことを言います。

身近なもので言うと、プラモデルや工作キットに近いイメージだと思います。同じものを作っていても、組み方の精度で完成品にあきらかな差が出た経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

住宅は階段だけでなくお家全体が職人さんによって組まれていくわけですから、当然誤差も出ます。

誤差というとミスのような印象が生まれますが、そんなことはありません。そういうものとして、それを美しく収めていく方法を職人さんたちが熟知している、ととらえてもらえるといいと思います。

私たちの手すりは現場で調整しにくい作りになっているため、採寸が仕上がりを左右すると言っても過言ではないんです。

採寸道具について

採寸に使用する道具、レーザー
↑レーザー

採寸には主に【メジャー】【レーザーもしくはレベル】【下げ振り】【差金】を使用します。
私たちはレベルを使っていますが、レベルは測量に使用する道具なので大工さんでも持っておられないことが多く、ほとんどはレーザーとメジャーで採寸しておられる印象です。

でも、これまでには専門的な道具なしで採寸されたお客さまも!
これは本当にすごいと思いました。後ほどご紹介しますが、簡単ではない(めんどくさい)作業だったと思います。もし工務店さんにお願いできそうな場合は採寸だけでもお願いされる方がよいかもしれません。

アイアン手すりの採寸の様子(レベル使用)
普段の採寸の様子(レベル使用)

これで採寸マスター?!押さえるべき大切なポイントとは

実践編

それでは、比較的難易度が高くない4段と7段の階段をもとにご説明します。

はな工房式、採寸の流れは以下の通りです。
1、”柱が立つ踏み板の段鼻”をむすんで直角三角形をつくる
2、その三角形の縦・横を正確に測る
3、測った数値で斜辺を計算してみる(アプリや計算サイトを利用しています)
4、コケなどがないかの確認も兼ねて斜辺を実際に測る
5、斜辺の実測値と計算値を比較する
6、あまりにも値が合わないときは3にもどる

柱が立つのは4段なら1・4段目、7段なら1・4・7段目です。

手すりの採寸図
↑採寸図の例:それぞれに合わせた採寸図をお渡ししています
斜辺の採寸の様子

まずはレーザーなどで高さ(蹴上方向)と横幅(踏面方向)を測ります。
測った値から斜辺を割り出し、実際の斜辺(段鼻から段鼻)も測って、長さを比べてみます。
*計算にはアプリや計算サイトが便利です→keisan

手すりの寸法図
↑この図は、実際に過去にはな工房で採寸した寸法を入れたものです。

この例では以下の通り。
・縦(1~4段分の高さ):618mm
・横(3段分の横幅):681mm
これをピタゴラスのt….計算サイトへ入力します。
斜辺の計算値は919.6mm、実測値は919.5mmでばっちりでした。

ちなみに1ミリ程度の誤差は許容範囲内。それ以上になってくると”本当にこのまま製作に入っても大丈夫なのか、、?”と頭の中で審議が始まります。

現場で考える私たちはもう一度測るだけで済みますが、このために現場に足を運ぶ必要があるお客さまや施工担当者さまへ再採寸をお願いするのは心苦しいので、毎回悩むところです。

実際の誤差は?

図面上の数値
右上(赤い点線の囲)が図面上での1段あたりの寸法。
この値で縦横を計算すると
4段【縦618 / 横682.5】
7段【縦600 / 横682.5】【縦1200 / 横1365】

実測
4段【縦618 / 横681(1.5ミリ差)】
7段【縦602(2ミリ差) / 横683(0.5ミリ差)】【縦1201(1ミリ差) / 横1365】

この例では数ミリの差がありました。

誤差があるとどうなるのか

さて、ここからが肝心です。
この中で1番大きい誤差は7段の1〜4段の縦2ミリ差の部分。
「2ミリくらいで?」と思われるかもしれませんが、仮に図面上の寸法で制作した場合、2ミリ分の隙間があるわけですから、無理やり取り付けるとその分下に押し下げられてわずかに歪みが生じます。(装飾手すりの場合はがっちりした形状なので無理やり取り付けることが難しく、足元の留め具部分に隙間が出来てしまいます。)

採寸時の誤差の影響
右側はわかりやすく表現しているだけで、実際はここまで歪みません

何十万もお金を出して、苦労して選んだのに、歪んでしまいましたでは後悔だけが残ってしまいますよね。わざわざ私たちを探してご依頼いただくのですから良いものをお届けしたい一心で、再採寸をお願いすることも多いです。

*補足*踏み板が斜めに施工されている場合がありますので、段鼻(段先)と柱が立つ位置の2カ所を測るとより正確な寸法になります!

スペーサー

ちなみに、足元の隙間に入れるスペーサーを使用することもあります。きっちりはかっていても踏み板のコケ(傾き)などでどうしても隙間ができる場合に使用しています。

それでは、実際の施工例とお客様のお声をどうぞ!

過去の実例から

実例1 〜2段目から5段目まで、4段分の手すりを採寸された福井県のお客様〜

お客様が取り付け後に送ってくださった4段のグレージュ色アイアン手すり

こちらは奥様が身重になり手すりの必要性を感じて、、とご連絡いただいたお客さまです。
私たちが採寸図をお送りするよりも先に一段ずつ測って資料にしてくださっていました。(すごい!)

もちろんそれでも構わないのですが、階段本体にコケ(傾き)があると誤差が生じることをお伝えして、あらためて採寸図を元に直角三角形の部分を測っていただくことに。

でも、道具はメジャーと差金のみ。
そこで、高さは床から2、5段目の段鼻を測り1段目の分を引き算。横は壁から2、5段目の段鼻を測り5段目の分を引き算するという方法をとりました。

床や壁は水平が出ていないこともあるので、この方法がベストとは言えないのですが、初めに送っていただいた寸法と計算値とも照らし合わせながら、何度も計り直していただいて最終的にはピッタリな寸法でお届けすることができました。納品後にいただいたメッセージはとても心に残っています。

【お客様より】
この度は階段手すりを作成いただきありがとうございました。
先日、無事に工務店に取り付けていただくことができました。
調整シムを一切使うことなく、完璧にフィットしました。
素晴らしい工作精度ですし、そこに至るまでの素人採寸に対する的確なアドバイスにも、心より感謝いたします。
グレージュはとても良い色で、妻も満足していますし、おかげさまで身重な体でも安全に登り降りできています。ありがとうございました。


実例2 〜奥様一人で何度も現場に通って採寸された愛知県のお客様〜

奥様が採寸された白色の階段手摺4段

こちらはどうしても白いフラットバー手すりを取り付けたい!とお電話頂いたことが始まりでした。採寸から施工まですべてお客様が行うという条件で施主様支給のOKが出たそうです。

何度も電話をしては採寸、ホームセンターに道具を買いに行って採寸、そしてまた電話で確認。電話でお話しした回数は数え切れないほどです。
さらに、お電話口は奥様で、元々まったく知識がない状態からのスタートだったのが、現場へも何度も通われて最後には正確な寸法を出せるように。(さすがに難しいかもしれないと少しでも思ってしまったことを反省しました^^;)

このお客様も先ほどの例とおなじ測り方ではありましたが、横方向に壁がない間取りのため、真っ直ぐの壁ラインを出すのに苦労されていました。

最後はご主人が取り付けてくださって、こうしてお写真まで送って頂くことができました。(実は白い壁用手すりもご注文頂いているんです。もちろん採寸はご自身で。本当にすごいです!)

【お客様より】

無事に付きました〜!
サイズ、ピッタリで、主人もスゴイ!って言ってました!
めっちゃ素敵です❤❤❤
ありがとうございます!

最後に

ここまでお読みいただきありがとうございます!
こんな長い文章を読んでくださった方には、もうお分かりいただけたかと思います。

できるけどできませんの正体。それは、

・大変かもしれないけれど、製作をスタートできる寸法が出るまで採寸していただけたケースでは、満足いただく手すりをお届けするお約束が「できる」

・図面上の数値で製作することも物理的には可能だけれど、正確な美しい手すりを届けするお約束は「できません」

なのでした。

段数が多かったり、途中で天井が干渉したり、まわり階段や踊り場を含む場合や、吹き抜け手すりとの連結が必要な手すりなど、、複雑になればなるほど知識や経験が必要です。

それでも、簡単にうまくいくケースもあれば、どうして〜〜〜?!?と頭を抱えるケースもあったりして、奥が深いなあと常々感じています。

満足のいく階段手摺にするにはデザインや製品の精度だけでなく、正確な採寸や取り付け作業があってこそと、少しでも感じていただけたら嬉しいです。

お問い合わせ

疑問や不安な点、費用のご相談など些細なことでも結構ですので、どうぞお気軽にお問合せください。ご希望をカタチにするお手伝いができましたら幸いです。