こんにちは!はな工房です。
今回はリフォーム・リノベーションなどで、アイアン手摺を取り付ける場合によくみられる『勾配のついた低い腰壁』について、メリット・デメリットから事例まで”階段手すり職人目線で”まとめてみました。
「リフォームで階段の壁を抜いてアイアン手すりを取り付けたい」「手すり工事の流れが知りたい」「斜め笠木だと手すりの段数計算はどうなるの?」を解決していきます!それではどうぞ!
平面図ではわからない?勾配のついた低い腰壁=斜め笠木とは
住宅のチラシでもよく見かける間取り図の仲間、平面図。
階段手摺のご相談では、平面図を見ながらお打ち合わせをすることが大半です。でも、平面図は階段の位置や段数、壁の有無は読み取れても、高さ関係などの立体的な構造までは見えにくいんです。
今回の斜め笠木もそのひとつ。腰壁の高さや周りとの関係をていねいに確認しながら進めます。
お電話では「あの、、滑り台みたいになってるやつなんですが、、」とか、「だんだんになっていないやつです」とか、「斜めの低〜〜〜い壁があって、その上に…」とか、なんて言い合いながら「そうそう!それです!」と盛り上がることもしばしば。
この、”平面図では見えにくい滑り台みたいな斜めの低い腰壁”のことを、私たちは斜め笠木と呼んでいるんです。正式名称は、正直よくわかりません。(小声)
このブログを書くようになって、階段関連は通称が多いなと感じております。正式名称をご存知の方いらっしゃいましたらご一報くださいませ。涙
リフォームで階段の壁を一部撤去して手すりを取り付ける場合には、既存の階段はそのままで壁だけ低くする工事になるので、階段ごと大規模にやりかえる必要がなく、コストも抑えやすい方法といえます。
斜め笠木とひな壇階段
まずは【斜め笠木(低い腰壁)】と、新築などでよく見かける【ひな壇階段】を写真で比較してみましょう!
用途としてのメリットは、
・斜め笠木は階段のホコリが横から落ちにくい
・足元が抜けていないので体感的な安心感がある
一方で、
・足元の有効幅が狭い
・階段1段目の段鼻よりも腰壁が少し前に出てくる
などのデメリットが上げられます。
こちらはリフォームで手すりを取り付けられたお客さまのビフォーアフター写真です。
もともと腰壁だったところを高さだけ低くして、その上にスチール手摺を取り付けておられます。このお客様のケースでは、腰壁を撤去した小口に笠木を取り付けたのでクロス工事はなかったそうです。大工さんが上手に仕上げられたんですね。
角度モノの難しさ
斜め笠木手すりにおける一番重要なポイントは、角度のバランスを見極めることです。
ひな壇とは違って足元がナナメなので、正確な角度が必要です。この写真はジャバラと言う実際の角度をはかる道具で、実際に笠木に押しあてて角度を計測します。
さらに、別の視点からも。高さ・横幅・斜め笠木の長さをはかって直角三角形の計算式で角度を算出。それから”実際の角度”と”計算式の答え”を照らし合わせるのですが、バッチリ合うことはなかなか少ないです。これは大工さんの腕が悪いとかそういった問題ではなく、そういうものなので (注1)、全体のバランスをとりながら製作寸法を考えます。
注1:詳しくは”私たちが採寸にこだわる理由“に少し書いています^^
アイアン手すりの高さと段数の考えかた
こちらは実際に制作した図面の一部です。
“角度”や”斜め笠木の大きな三角形【縦:941】【横:908】【斜め:1307.5】”のほかに、注目して頂きたいところは《185》という数字。この185mmは階段1段目の段鼻から斜め笠木の上端までの垂直の寸法です。
お客さまのご希望は”830mmの高さの手すり”だったので、185mmを引いてアイアン部は高さ645mm。費用は段数で計算になるので、腰壁がなかったらと仮定して4段分の価格になっています。
外側からの見た目では腰壁とのバランスに気が行きがちですが、実際上り下りするのは内側にある階段ですから、ご希望の高さや他の壁手すりとの兼ね合いでベストな位置を探されたいですね。
はな工房では腰壁も含めたイメージ図を使って、高さ違いや寸法違いでいくつかご提案することも。たかが手すり、されど手すり。デザイン性と実用性を兼ねた製品をお届けできればと思っています。
では、ここからは実例を8件ご紹介いたします♪どうぞ〜!
1、天井とのバランスを考えて / 笠木から65cmの高さ
かね折れ階段の4段目からはじまる6段分の手すりです。
階段の途中からはじまる手すりは天井と干渉する場合が多いため、このように天井に当たらないよう加工します。高さが65㎝(650㎜)以上になると、天井へ当たる部分がどんどん手前にのびて水平部分が広くなってしまうので、バランスと使い勝手が良いギリギリの65㎝となったのでした。
2、リフォームのスキップフロアにシンプル手すり / 笠木から75cmの高さ
リノベーション住宅でスキップフロアを作られたお客様。
キツめの勾配の階段で2階へ上がります。急な階段は踏み外したり滑り落ちたりと危険要素がたくさんあるので、お客さまと綿密なお打ち合わせを重ね、75cmで製作になりました。落下の危険も考慮して、縦にバーが入るデザインをお選びになったのでした。
3、唐草がステキなロートアイアン調手すり / 笠木から80cmの高さ
こちらは新築に取り付けた唐草模様がステキな装飾アイアン手すり!一生に一度の新築だからと、お客様が豪華なロートアイアン手摺をご希望されました。白を基調としたシンプルな空間に、どっしりインパクトの強い手すりがステキです。高さは装飾が映える80㎝で制作しました。
先ほどまでのシンプルな手すりとちがって手すり本体の装飾をしっかり魅せたいときは模様とのバランスも考えて少し高めをおすすめいたします♪
4、ホワイトでクラシカルなアンティーク手すり / 笠木から80cmの高さ
階段の踏み板までもが真っ白なホワイトインテリア♪こちらも装飾を魅せるために高さ80㎝で制作しました。
広い玄関ホールだったこともあって、手すりの高さによる圧迫感はまったく感じませんでした。白色が周囲のマテリアルへ溶け込んでより広く感じられたのだと思います。
5、唐草手すりでクラシックモダンな装い / 笠木から80.4cmの高さ
鏡に映る唐草模様のアイアン手すりがおしゃれな空間。モダンな雰囲気にヨーロッパデザインが面白い組み合わせです。
高さ80.4㎝とは中途半端ですよね。こちらは段鼻から90cmの高さになるように、【段鼻から笠木上端9.6+アイアン80.4=90㎝】としました。
6、ピアノ教室の看板手すり / 笠木から70cmの高さ
自宅でピアノ教室をされている先生からのご依頼で制作した音楽モチーフのフルオーダーメイド手すりです♪生徒さんが玄関を開けたときすぐに目に入る場所に設置しました。
ご自宅が2階で階段を頻繁に上り下りされるので、お客さまの身長にあわせて段鼻から76cmと低めに。
圧迫感がなく、低めの高さでも美しく見えるプランをいくつかご提案させていただきました。生徒さんにも親しまれるようにとこのデザインを選んでくださったそうです^^
7、オリジナルで唐草をデザインした手すり / 笠木から75cmの高さ
こちらの手すりもお客様のご希望をもとにオリジナルでデザインしたアイアン手すりです。
「手すり全体に唐草を入れて欲しい」とご相談があり何タイプかデザインしました。
回り階段の中央部分なので、降りるときに落下の危険を感じにくく、かつ圧迫感も少ない、85㎝の高さ(踏み板から斜め笠木が10㎝)で制作しています。
8、新築後すぐにリフォームをして取り付けたアイアン手すり/ 笠木から80cmの高さ
さいごに、お引き渡し後すぐに階段の腰壁を撤去してアイアン手すりを取り付けられたケースです。ハウスメーカーさんの社内規定との兼ね合いでお引き渡し後のリフォームとなりました。
この手すりのポイントは斜め笠木が2枚ジョイントされているところ。角度モノがL字になっていると、難易度が格段に上がります。取り付け工事が無事終わったときには心の底からホッとしたものです。
それぞれのベストな手すりをご提案します
斜め笠木でも、お家によって印象がさまざまでしたね。何においても、デザイン・設置場所の特徴・お客様にとっての使いやすさ!この3つのバランスがとても大切です。これからも、お客様の一番を追求していきたいと思います。